エピソード2「幸せになるための最も大切なこと」
『あ、ひなたがでてる!!やったー!!!
優くん、日向のあるところにクッション置いてくれる?』
庭につながる大きな窓から、太陽の光が豊かに差し込んでいる。
ここはアーシャの日向ぼっこスポット。
晴れた日は、いつもここにいる。
「いいけど・・・日向ぼっこしながら話すの?」
『そうだよ。』
ぼくはアーシャが指定する場所に、ふわふわのクッションを置いた。
亀の形をしたアーシャのお気に入りのクッション。
『ふう、ぽかぽかで気持ち良い。
なんて、素晴らしい日なんだろう。
太陽のエネルギーがぼくの体にじわ〜って広がる。
はあ、幸せ。』
ぼくはムッとした。
「アーシャ、はやく話してよ。」
アーシャはクッションの上で両手両足を前に投げだして寝転んでいる。
うっとりとした顔をして、すごく気持ちよさそう。
『ぼくは今この瞬間の幸せを、心地良さを味わっているんだ。
優くんも一緒に日向ぼっこしよう。』
「しないよ。真剣に話してよ。ぼくの幸せがかかっているんだから。」
ぼくはイライラしていた。
『なーに言っているの、優くん。
ぼくは見本を見せているんだよ。
幸せになるための見本をね。』
「え?日向ぼっこで幸せになるの?」
アーシャは寝転びながらぼくのほうへ顔を向けた。
『優くん、ぼくはなんのために日向ぼっこをしていると思う?』
「犬だから。」
『犬はどうして、日向ぼっこをするの?』
「知らないよ。そういう習性なんじゃないの?」
『全然違うよ!もう!』
「牛みたいだね。」
『も~!も~!』
アーシャってノリがいいんだな。
『なんか、牛の真似してたら小腹が空いたな。
ちょっと、おやつちょうだい。』
「え?朝ごはんを食べたばかりなのに太っちゃうよ・・・。」
『お願いだよう、ちょっとでいいから。』
しぶしぶおやつをあげると嬉しそうに3センチほどしかない小さな尻尾を振るアーシャ。
「犬が日向ぼっこをするのはどうしてかって、そんなに重要なの?」
『もちろん、重要だよ。』
「どうして日向ぼっこをするの?」
『犬が日向ぼっこをするのはね、それはね、
もぐもぐ
良い気分になるためだよ。』
ぼくは眉をひそめながら首を傾げた。
「どういうこと・・・?」
『ぼくが日向ぼっこをするのは良い感情を味わうためなんだ。
良い気分。良い気持ち。良い感情。』
「良い感情を味わうことができるから日向ぼっこが大事なの?」
『うん。』
「どうして?」
『それが幸せになるために最も大切なことだからだよ。』
「良い気持ち?良い気分?良い感情が?」
『うん。幸せになるための方法は、それだけだと言ってもいいくらいだよ。』
「それだと簡単すぎるよ。」
『うん。簡単なんだよ。
幸せになる方法は単純なんだよ。
人は「幸せ」を難しく考えすぎているよ。』
「どういうこと?」
『少しずつ、話していくよ。
優くんは自分の気持ちを感じたことがある?』
ぼくは顔を横に振る。
『人間は今の自分の気持ちに、あまりにも無頓着だ。
いつかの幸せのために今、苦しみを選び、我慢をしている。
その「いつか」も今日という日々の繰り返しなのに。
いつか、いつか、いつか。
といいながら人生は過ぎていくよ。
今はヒマがない。頑張らないといけない。
そう言って、ぼくとも遊んでくれない。』
「う・・・。」
『今、いい気分になることが大切なんだ。
ほら、横においでよ。
一緒に日向ぼっこをしよう。』
<幸せ脳のつくり方メモ>
・幸せになるためにもっとも大切なことは良い感情を味わうこと
<読んでくださる皆さまへ>
「」=優が話しています。
『』=アーシャが話しています。