エピソード1-2「幸せになる方法」
カタン、カタン。
空っぽになったエサ箱を丁寧に舐めつづけるアーシャ。
エサ箱に手を入れて、エサ箱を斜めにして外側も丁寧に舐める。
裏側(床についてた部分)も舐める。
外側や裏側って、味しないはずなんだけどな。
内側も外側もぜーんぶ、
よだれでベタベタ。
『ふー・・・おいしかった。
カリカリのドックフードは最高だね。
優くんも食べてみたらいいのに。』
・・・。
『優くん、すんごい、疑いの目でぼくをみているね。』
「だって、まだ信じられないよ・・・痛!!」
アーシャがぼくのスネを尖った爪で引っ掻いた。
「なにするんだよー。」
『夢じゃないでしょ?』
「まぁ。」
スネがヒリヒリして、これが現実なのだということを実感した。
『ぼくはね、優くんに「幸せになる方法」を教えてあげるためにお月さまにお願いしたんだよ。』
ドヤ顔をするアーシャ。
「そうなの?
幸せになる方法を、アーシャは知っているの?」
テテテテテ。
ごはんの後は決まってキッチンへ行くアーシャ。
キッチンの床になにか落ちていないか念入りにチェックする。
母が朝ごはんの用意をした後なのだ。
食い意地が張りすぎている・・・。
ご近所で暮らすタロちゃんは、ごはんを食べてくれないらしい。
いつもドックフードを食べさせるのに苦労するのだとか。
食べることに興味のない犬もいるんだな。
アーシャを見ていると信じられない。
だってアーシャはすごくすごく食いしん坊だから。
タロちゃんの話しを聞くとアーシャが食いしん坊でよかったなって思う。
だって、ごはんを食べてくれないのは心配だもんね。
アーシャの場合は食べ過ぎて心配なんだけど。
もぐもぐ。
『うん、おいしっ』
何か落ちていたらしい。
「落ちているのを食べるのはやめなよ。」
ぼくが注意をしても、まだキッチンの床を調べている。
『いつも小さな人参や米粒やチーズが落ちているんだよ。
玉ねぎやネギが落ちていたことはないよ。
ぼくが食べてはいけないものだからね。
おかあしゃんは、ぼくのためにぼくの好きなものを落としてくれているんだよ。
だから、食べないと失礼でしょ。』
「都合が良い解釈だな。」
『へへへ。
すごいでしょ、ぼく。』
「褒めてないよ。」
『ぼくは都合が良い解釈が得意なんだよ。
都合良く解釈をしたほうが幸せでしょ?』
「えー。どうかな。
ところで、幸せになる方法のことだけど・・・。」
『あ、そうだったね。
幸せになる方法、知っているよ。
知らないのは人間くらいだよ。』
「それ、本当?」
『嘘ついても仕方がないでしょ。
本当だよ。』
アーシャ、生意気だな。
「・・・幸せになるには、どうしたらいいの?」
『簡単だよ。
幸せになるには、「幸せ脳」になる必要があるんだ。』
ふふん。
と得意気に鼻を鳴らすアーシャ。
「幸せ脳ってなんなの?」
『幸せ脳はね「自分を幸せに導く思考」をもっている脳のことだよ。
ほとんどの人がね、幸せ脳ではないんだよ。
だから幸せではない日々を過ごしている。』
「よくわからない。」
『シンプルなことだよ。
幸せな人は「幸せ脳」をもっていて自分を幸せに導くことができる。
幸せではない人は「幸せ脳」をもっていないから自分を幸せに導くことができないんだ。』
「ぼくはもっているのかな?」
『優くんは幸せになりたいんだよね?
今は幸せではないって思うんだよね。
それなら「幸せ脳」ではないよね。』
「・・・。」
『そんながっかりしないでよ。
人はいつでも、だれでも『幸せ脳』になれるんだから』
「そうなの?」
『ぼくが優くんを「幸せ脳」に導いてあげるよ。』
<幸せ脳のつくり方メモ>
・「幸せ脳」=「自分を幸せに導く思考」
・幸せな人は「幸せ脳」をもっている
<読んでくださる皆さまへ>
「」=優が話しています。
『』=アーシャが話しています。