エピソード13「思考を意図的に心地良いものに変化していく」

 
夜の散歩にきたぼくとアーシャは

欠けていくお月さまを見ていた。

 

新月に向かっているんだ。

 

『お月さま、綺麗だね。』

 

「そうだね。」

 

『欠けているようにみえるだけで

お月さまは今もまんまるなんだね。

 

優くんもね、優くんもまんまるだよ。』

 

「え!ぼく、太ってないよ。」

 

アーシャはあははと笑った。

 
『そういうことじゃないよ。

欠けているところなんかひとつもない。

完璧な存在だねって言いたいんだ。』

 

「ぼく完璧かな?

 

すぐにイライラしちゃう。

怒っちゃう。

嫉妬しちゃう。

妬んでしまう。

それでも、完璧?」

 

『完璧だよ。

不完全なところも含めて、完璧だよ。

 

人はみんなそうだよ。

イライラしてしまうときも

怒ってしまうときも

嫉妬してしまうときもあるよ。

妬んでしまうときだってある。

 

でも優くんは、そういう自分の側面に気付き、

受け入れ、認め、その感情をやわらげていきたいって思っている。

 

人にはプライドがある。

自分のそういう側面を受け入れるって実は難しいことなんだよ。
 

だからね、受け入れている。

それだけでも素晴らしいことなんだよ。』

 

アーシャの言葉を聞いて、ぼくは嬉しくなった。

 

「アーシャも完璧だね。

食いしん坊だけど。」

 

ぼくはにやりと笑ってアーシャを見ると、

アーシャもこちらを見てにやりと笑った。

 

月をぼーっと見ていると

道を歩く高校生の男の子が目に入った。

その子が飲み終わったジュースの空き缶をポイッと公園に捨てて、そのまま歩いていってしまった。

 

「あ!最悪!!」

 

ぼくは反射的に言った。

 

「なんてひどいんだ。

まったく!ごみはごみ箱に捨てるか持って帰らないと。」

 

プンスカ怒りながら空き缶を拾いにいくぼくを見てアーシャが言った。

 

『優くん、知ってる?

捨てられたゴミを拾うとね、幸運が降りそそぐんだ。

優くんには今この瞬間、幸運が降り注いでいるね。』

 

「え!そうなの?ラッキー。」

 

『優くん、思考の反応に惑わされないで。

 

まずはじめに「あ!最悪!」って脳が反応した。

それは仕方がないことだよ。

 

大切なのは第2の思考でしょ??

思考を意図的に心地良いものに変化させていくんだよ。』

 

「あ!そうだった。

・・・忘れていたよ。

なかなか、できるようにならないな。」

 

ぼくはため息をついた。

 

「でもアーシャ、ゴミを捨てるなんてひどいと思わない?」