エピソード10-5「幸せ脳になるための訓練」

 
ぼくは、ぼくの1日を丁寧に思い出しはじめた。

ノートのいちばんうえのところには「今日に感謝します」と書いた。

 

「・朝、目が覚めた。

・そばにアーシャがいて、それで幸せだと感じた。

・今日もアーシャが可愛い。

・ベットから起き上がることのできる筋肉がある。

・心臓が動いてくれている。

・おはようって言葉を交わし合える大切な人がいる。

・着る服がある。

・顔を洗う水がでること。

・豊かに水をつかえる。

・お母さんが朝食を作ってくれている。

・朝早くに出る日なのに、いつもより早く起きて作ってくれた。

・ぼくの栄養を考えてくれている、美味しいごはん。

・お腹いっぱい食べれる豊かさ。

・朝の空気が気持ちよかった。

・車がある。

・ガソリンを入れるお金がある。

アーシャ、感謝することって、こんなにあるんだね。」

 

『本当だね。すごいね。』

 

「・会社について、誰もいなかったけど・・・」

 

と書きながら、ぼくは嫌な気持ちになってきた。

どうしたらいいんだろう。

 

『優くん、言葉を変えてごらん。

「誰もいなかったおかげで」って書いてごらん。

言葉の使い方を少し変えるだけで、気分って変わるんだよ。

大切なのは良い気分になる言葉を探すことだ。』

 

ぼくは頷いてつづけた。

 

「・会社について、誰もいなかったおかげで、まだ読めていない漫画を読むことができた。

・同僚の前田が休憩時間に「大変だったな」と言って珈琲をおごってくれた。

 

ぼく・・・前田に、丁寧にお礼を言えたかな。」

 

『優くん、大丈夫だよ。

それに気付けたことが素晴らしいでしょ?

明日、伝えるといいね。』

 

「・美味しい夜ご飯を食べることができた。

・アーシャと心地良い夜を過ごせている。」

 

ぼくは、良い気持ちになっていた。

アーシャはそのことに気付いているようだった。

 

『さいごに「今日もありがとうございます。」って書いてね。』

 

ぼくはアーシャに言われた通りに書いた。

 

『感謝はね、人の心を心地良い気分に導いてくれるんだよ。

感謝をすると心が満たされる。

自分の人生の素晴らしさに気付くことができるんだ。

寝る前の感謝を習慣にしてみて。』

 

「良い気持ちになるために?」

 

『もちろん、それもあるよ。

あとは幸せ脳になるための訓練になるんだ。』

 

「訓練?」

 

『うん。

起こる出来事のなかにある「感謝」できるところにスポットを当てる。

それはね幸せ脳になるための訓練になるんだ。

優くん、起こる出来事には「見方」が無限に存在するんだよ。

「起きた出来事」は1つだけど、それに対する見方は無数にあるんだ。

朝、上司が優くんに連絡するのを忘れていたよね。

優くんはそれに対して腹が立ち、嫌な気分を感じた。』

 

「うん。それは悪いこと?」

 

『悪いことではないんだよ。

良い、悪いはないんだ。

だけどね、嫌な気分を感じても、自分は徳をしない。

どうしてだかわかる?』

 

「嫌な気分を感じると、嫌な現実が引き寄せられるから。」

 

『うん。

優くんにとって大切なことはね、どんなときだって良い気分を感じていることなんだよ。

だからね、「起きた出来事」は1つだけど、そこから自分の気分が良くなる思考を見つけるんだ。

そして、無限にある見方のなかで、もっとも波動が高く、自分の気分を良くしてくれる思考が、感謝なんだよ。』

 

「そうなの?」

 

『そうだよ。

毎日、その日にあった感謝できることを探しつづける。

最初はノートに書く。

でもだんだん、頭の中だけでできるようになるよ。

それを続けていくとね、脳が自然と「感謝」できることを探すようになるんだよ。
 

寝る前に反省なんてしなくていい。それよりも感謝するんだ。』

 

「うん・・・。」

 

『そういえば優くん、この家って黄色いものがたくさんあるよね。』