エピソード12「人は今この瞬間も宇宙から認められている」

 
『優くん、おかえり〜』

 

「ただいま、アーシャ」

 

『あれ?

元気ないけど・・・クッキーは渡せた?』

 

「うん。渡せたよ。

すごく喜んでくれたんだよ。

休憩に食べてくれて、感想も伝えてくれた。

 

「すごくおいしかった。

こんな特技があったんだね。

また食べさせてほしい。」

そんなふうに言ってくれたんだ。

 

前田って本当はいいやつなんだ。

素直で誠実だから上司にも好かれる。

ぼくはただ、羨ましかったんだ。」

 

『そうだったんだね。』

 

「今日、前田が賞状をもらったんだ。

成績がよかったから。

ぼくのなかには、また嫌な気持ちが浮かんだ。

本当に嫌なやつ。」

 

『優くんは、前田くんが嫌い?』

 

「嫌いじゃないよ。」

 

『優くんは、誰が嫌なの?』

 

「自分だよ。前田に嫉妬する自分が嫌なんだ。

前田ががんばっているから賞状がもらえた。

じゃあ、ぼくもがんばればいいだけなんだ。」

 

『優くんは賞状が欲しいの?』

 

「・・・いや、あれ?・・・欲しくない。」

 

『会社で上司に好かれたいの?』

 

「・・・嫌われたくないけど、好かれたいわけでもない。」

 

『優くんは、誰かに認められたいの?誰かに承認されたいの?』

 

「わからないよ。

ただ、前田を見てると自分には価値がないって思ってくるんだ。」

 

『自分が価値のある存在だって、誰かに証明をしたいの?』

 

「・・・そうかもしれない。

 
前田みたいにかっこよければ

前田みたいに仕事もできれば

前田みたいに夢中になれるものがあれば

ぼくは価値のある存在になれるのかな。」

 

『優くんは、前田くんみたいにならなくていい。

前田くんは前田くんの人生を楽しんでいる。

前田くんは前田くんにとっての心地良い人生を歩んでいる。

だから輝いて見えるんだよ。

 

優くんは優くんだ。

優くんは優くんにとっての心地良い人生に気付き、

自分にとっての心地良い人生をつくっていったらいいんだよ。』

 

「ぼくなんて、なにもできないよ。」

 

『ぼくなんてって言わないで。

自分の価値を自分で落とさないで。』

 

「・・・・。」

 

『優くん、人はね自分の価値を誰かに証明しなくていいんだ。

自分が自分の価値を信じてあげるだけでいいんだ。』

 

「信じられるわけがないよ。

だってぼくは、ずっと落ちこぼれなんだから。

学校の成績も良くない。

夢も諦めた。

今だって・・・ぼくがいなくても会社はまわる。」

 

『それが優くんが見ている、優くんの姿なんだね。』

 

「何がいいたいの?」

 

『優くん。

人の価値は外見や成績では決まらない。

他人からの賞賛で決まるわけでもない。

ここにいる。

それこそが、優くんの価値だよ。』

 

「え?」

 

『優くんはね、この世界に生まれることを望み、それを宇宙から許された尊い存在だよ。

だから、この世界に肉体をもって生まれてきたんだ。

今この瞬間も優くんは宇宙から祝福されている。

証明しなくていいんだ。

大いなる存在である宇宙が・・・

優くんの魂が・・・

優くんの価値を知っている。

 

優くんはね、宇宙から認められているから、ここにいるんだよ。

だから今この瞬間も優くんは認められているんだよ。

誰かに認めてもらおうと、もがかなくていいんだ。

だって、君は創造主である宇宙に認められているんだから。』

 

「そんなの証拠がないよ。」

 

『あるよ!!ここにいるという奇跡だよ。

 

ここにいること。

それだけで優くんは誇れるんだよ。

 

選ばれたんだよ。

この世界に生まれてくることを。

そして、こうして生きている。

 

それって、奇跡なんだよ。

すごいことなんだよ。

 

呼吸が止まれば死んでしまう。

心臓が止まれば死んでしまう。

血液が循環しなくなれば死んでしまう。

 

でも優くんは、こうして生きている。

生きることを許され、受け入れられ、認められているんだ。

 

それほどに、尊い存在なんだ。

 

当たり前なんかないんだよ。

だからね、自分には価値がないなんて思わないで欲しいんだ。』

 

「でも・・・。」

 

『自分を信じること。それだけだよ。』

 

「頭では理解できそうだけど、

「そんなわけない。お前はダメなやつだ。」

って自分が言うんだ。

心から信じることができないんだ。

信じ切ることができないんだ。」

 

『「自分には価値がない」。

優くんは、そう思い込んでいる。

 

優くんだけではないね。

この地球に暮らす人の多くが、そう思い込んでいる。
 

自分には価値がないと思い、

いつも劣等感を抱き、

他人と比較し苦しんでいる。』

 

「うん。」

 

『信じることができないのは、全て「エゴ」からきているんだ。』

 

「エゴ?」